こうの史代の漫画から考える 戦争と日常

漫画紹介

終戦記念日が近づいてきましたので、今回は戦争に関する漫画を紹介したいと思います。

今回紹介するのはこうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」、「この世界の片隅に」の2作品です。

こうの史代さん

著者のこうの史代さんは広島出身の漫画家です。

中学生の頃から漫画を描き始め、広島大学理学部に入学し、その後プロの漫画家を目指して上京、

95年に漫画家としてデビューしています。

「夕凪の街 桜の国」は2004年発表。2007年に映画化されております。

「この世界の片隅に」には2009年発表。2011年、2018年にドラマ化、2016年に劇場アニメが公開されています。

両方とも広島を舞台とした漫画で、市民の目線から戦争や日常を描いた作品です。

 

夕凪の街 桜の国

昭和30年、灼熱の閃光が放たれた時から10年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の小さな魂が大きく揺れる。最もか弱き者たちにとって、戦争とは何だったのか……、原爆とは何だったのか……。漫画アクション掲載時に大反響を呼んだ気鋭、こうの史代が描く渾身の問題作。
引用元:amazon.co.jp

 

著者のこうの史代さんはこの作品を書くまでは、原爆に関するテーマの漫画を避けてきたようです。

しかし、ある時担当から、広島についての漫画を書いて見たら?

と言われたことがきっかけで戦争のことを調べて作品を作り上げたようです。

 

あとがきにも書いているのですが、

こうのさんは広島で生まれ育ちましたが、原爆の被害も少なく、

戦争に対して踏み込んではいけない領域だと感じていたとのことです。

しかし、

「原爆、戦争を経験していなくとも、

それぞれの土地のそれぞれの時代の言葉で、

平和について考え、伝えてゆかねばならない筈」

と考えこの作品を描くに至りました。

 

この漫画では原爆症や差別など3世代にわたって描かれています。

それぞれ時代は1955年、1987年、2004年となっています。

1955年

原爆から10年後、平野皆実は建築会社で働いていたのですが、

原爆を落とした側の人間に、死んでもいい人間として扱われたこと、

多くの人が亡くなったのに自分だけが生き残った罪悪感を感じていました。

それゆえ、自分を想ってくれる人にも応えることができず苦しい思いをします。

嬉しい?

十年経ったけど

原爆を落とした人はわたしを見て

「やった!またひとり殺せた」

とちゃんと思ってくれてる?

ひどいなぁ

てっきり私は死なずに済んだ人かなと思ったのに
(夕凪の街、桜の国 P.33,34引用)

というセリフが心に残りました。

1987年

皆実の弟旭とその子供の七波と凪生が登場します。

1955年に皆実と一緒に暮らしていた祖母も同居しており、3世代での生活が描かれています。

凪生はぜんそくのため病院での生活を送っています。

2004年

大きくなった七波と凪生が話の中心になります。

凪生は恋人の両親から被爆2世という理由で交際に反対されていました。

また凪生の父、旭の回想シーンもあり、

旭が広島の京子と結婚しようとしますが、

「近い人が原爆で死ぬのを見たくない」

と祖母に反対されます。

広島からの帰りのバスで七波が独り言でつぶやいていたセリフが印象的です。

母や祖母が亡くなった原因が原爆かわからないのに、

私も凪生もいつ死んでもおかしくない人間として決めつけられるのだろうか?
(夕凪の街、桜の国P86参照)

原爆や原爆症の漫画は「はだしのゲン」を思い浮かべる人も多いと思います。

細部はうろ覚えなのですが、

原爆直後の原爆症(吐血、下痢、寒気)などの描写が多かったように思います。

夕凪の街 桜の国では原爆後何年も、原爆症だけでなく、

周りの人の差別にも苦しめられている様子が描かれています。

この世界の片隅に

平成の名作・ロングセラー「夕凪の街 桜の国」の第2弾ともいうべき本作。戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。
引用元:amazon.co.jp

広島の出身で少し?天然な「すず」が主人公の漫画です。

前作「夕凪の街 桜の国」では原爆中心のストーリーでしたが、

本作では戦争全体を広島の庶民の視点で描いた作品です。

すずの幼少期から呉の北条家に嫁ぎ、戦争を体験するところまで描かれています。

すずの同級生で軍人になった水原とのエピソードが考えさせられました。

戦争によって変わった価値観

水原の兄も軍人で幼い時に事故で亡くなっています。

だから兄と同じように自分も軍人に志願します。

このことを水原は「当たり前の夢」と言います。

軍人が命を懸けて国のために闘うのも当たり前。

しかし、ヘマもないのに叩かれたり、手柄もないのにヘイコラされるのは

人間じゃなくて、カミサマの当たり前じゃないだろうか?

どこで人間の当たり前から外れたのか?

それとも周りが外れているのか?
(この世界の片隅に 中 P88参照)

このようなことを考えていた水原ですが、

すずに久しぶりに出会い、昔と同じように接してくれることに対して安心します。

すずが普通で安心した。

この世界で普通でまともでいてくれ。

わしが死んでも一緒くたに英霊にして拝まんでくれ。

笑ってわしを思い出してくれ。

それができんなら忘れてくれ。
(この世界の片隅に 中 P88参照)

このような言葉を残して翌朝早くにすずの家を発ちます。

 

当時、戦死者は靖国神社で神として祀られるとされ、

軍人をありがたいものとして扱うようになってきました。

逆に戦争に反対したり、軍隊から逃げかえってきた人のことを非国民と蔑み、

居場所をなくし、袋叩きにする風潮もありました。

このようなことも含めて

「人の当たり前から外れている」

といっているように感じます。

報道規制により、国民には誤った情報がふりまかれ、

国全体が戦争に熱狂していく中で、人の価値観が捻じ曲げられている。

しかし、それを大声でいうこともできず、、、

水原はそのような思いを、幼馴染で信頼のおけるすずにこぼしたのではないでしょうか。

 

そんな、すずも物語の後半に戦争による傷を受け、

自分がゆがんでしまったと感じてしまいます。

まとめ

「夕凪の街 桜の国」、「この世界の片隅に」に共通するのは

一庶民が主人公の視点で物語が描かれていることです。

戦争が教科書やニュースで扱われているような歴史上のできごとでなく、

そこに生きる人々にどんな影響があったのか、

当時の生活や人間関係を知ることでより身近に感じられる作品になっています。

管理人
管理人

戦争を死傷者や使われた弾薬など、規模的に語るのではなく

そこに生きる人の世界に与える影響を描いています。

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